ホラー映画

このごろ自宅でよく映画を観る。

70年代パニック系の『タワーリング・インフェルノ』『ポセイドン・アドベンチャー』に始まり、『猿の惑星』新3部作、“日本で最初のカーチェイス映画”とされる『暴走パニック 大激突』を挟み、『悪魔のいけにえ』『サスペリア(オリジナル)』『サスペリア(リメイク)』『エクソシスト』を観た。

ホラー映画には直視できないようなグロい描写がある。刃物でどうこうとか血がどうこうとか。夢にまで出てきそうで出てこなかったけれど、顔に吹き出物が3つほどできた。皮膚科のおじいちゃん先生には「疲れてるんや」と言われた。ホラー映画のせいかも、とは言えなかった。

そんなタイミングで、近所のコンビニに『懐かしの名作恐怖映画大解剖 新装版』という本が置いてあった。手に取ってレジに行くと、店員のおばちゃんが裏表紙の写真を指さし、「私これ観ました」と言う。そこの店員さんに話しかけられるのは初めてだったので驚いたが、コロナ対策のビニール越しに少ししゃべった。

「ゾンビですか? ぼくは悪魔のいけにえとか、エクソシストとか観ました。最近ホラーにハマってるんですよ」「私ホラーしか見ません」「えぇ!? じゃあこれ見ました? シャイニング。気になってるんです」「ものすごくドキッ!ドキッ!としますよ」

別れ際におばちゃんは「この本、私も欲しいです。いいなぁ」と言った。また会うことがあれば『シャイニング』の感想でも話そうか。マスクしてても、お互いを認識できるだろうか。

6月

3か月ぶりにやったことが、いろいろあった。電車に乗った。友人に会った(宅飲み)。打ち合わせで人に会った(カフェにも入った)。取材で人に会った。サッカーした(習いごと)。あらためて書き出してみると、コロナ前の「あたりまえ」が3か月間まったくなかったことに怖くなる。

ぽつぽつだった仕事はいくつか重なり、ひさしぶりに時間に追われる感覚を味わった。本屋では友人が声をかけてきてくれて立ち話。マスク&帽子姿だったのによくわかったなと思う。

もともと街を歩けばファンたちからワーキャー言われるような日常じゃなかったけれど、自分にとっての日常が少しずつとはいえ戻ってきたことがよろこばしい。スルメのように噛みしめている。

4月と5月

いつか振り返ったとき、「コロナやったな」と思いそうな仕事を2つ、やらせてもらいました。

ひとつは、外出自粛中に夏のバーゲンのコピーを考えた案件です。閉じこもりがちな心に抗い、開放的な気分になれるかが勝負でした。なれました。

もうひとつは、授業の動画をつくった案件です。大谷大学で講師を務めるのは4年連続(自分的快挙!)でしたが、今年の授業はオンライン。前もってパワーポイントで資料をこしらえ、AMラジオのように、語りかけるように声を録音しました。棒読みぎみだったかもしれません。でも、内容は先生のお墨付きです。

6月が始まります。

イテテテッ。

約10年ぶりのWiiフィット再開以来、毎日汗をかいています。家の外でジョギング(徒歩込み)も始めました。そして、食べるものはしっかり食べて、体重を減らしたり増やしたりして生きています。

心も動かすようにしています。ツボを刺激して、ほぐしてあげる。感情にはざっくり分類して喜怒哀楽がありますが、「楽」については、YouTubeで中川家の漫才やコントを見てニヤニヤしています。あと、少人数のリモ飲み。まったり話すのが楽しいです。「怒」と「哀」は政治のニュースでいっぺんにクリアですね。「喜」は……難しい。茄子とかスナップエンドウがおいしいだけでも嬉しかったりするけれど、もっとこう、なんかあるはずと思ってしまいます。

喜怒哀楽はCMYKみたいなもの。ほんとうの感情はいろんな混ざり方をしていて、名前なんてなかなかつけられません。とにかく、効きそうなツボを探して、押して、ほぐします。

それと、心にも「イタキモチイ」はあるんやろなぁと考えたり。イテテテッとなることがあっても、いつか、「痛みに耐えてよくがんばった(小泉純一郎)」と、「自分で自分を褒めたい(有森裕子)」ですね。

押しすぎや悪いツボに気をつけて。

STAY HOPEやで。

4月がよくわからないまま去って、暦の上では5月です。タイムスリップでもしたような気分になりますが、カレンダーがめくれただけ。ひきつづき、5月もよくわかりません。だけど、わからないんだから、わかった気になってヤケ食いしないこと。そう心に留めて3食もりもり食べています。

STAY HOMEでありながら、STAY HOPEなわけです。「希望」とか言い出したらヤバいぞ、壺やら水晶やら売りつけられるんちゃうか。「希望」とかメーカー希望小売価格しか知らんぞ。ええ、わかります。でもね、耳をすませば、ごみ収集車の音楽の向こう側から茨木のり子さんの詩が聞こえてくるでしょう。「STAY HOMEやからって、心がパッサパサに乾いたらあかん。自分の感受性くらい自分で守れっつうの。STAY HOPEやで、ばかものよ」。 最近は、押し入れから発掘したWiiフィットで汗をかいています。

元気玉2020

漫画『ドラゴンボール』の「元気玉」を知っていますか?
人間や動物、自然など、生きとし生けるもののエネルギーを集め、それを敵にぶつける必殺技です。空に向かって両手を広げ、「オラに元気をわけてくれ!」と叫ぶ。すると、あちこちからエネルギーが集まってくるのです。

フリーランスって元気玉みたいやな、と普段から感じていました。たとえば月末。請求案件を集めて、妻に「今月はこれだけやで」と請求書の控えをぶつけるところとか。今、社会に元気がなくなってしまい、仕事という名のエネルギーが集まりにくいです。あらためて、自分も社会とつながっていることを思い知らされます。

仕事は減っていますが、それに反比例して体重は増えています。運動不足とお菓子とお酒のせいです。家にいても外気浴と日光浴は心がけています。ベランダに出て、空に向かって両手をパッと広げる。「オラに元気をわけてくれ!」と叫ぶ、のではなくストレッチのために。そうそう、体を動かせば、頭も気分も動いてくれます。

カクカク企画、10年目の春です。

カクカク企画という屋号をつけて、フリーランスとして歩み始めたのは、2011年3月21日のこと。
この春、カクカク企画は10年目を迎えました。

今、仕事を依頼してくれる人の中には、かつて机をならべて働いていた人やその転職先の人がいて、つきあいが長くなってきた取引先の人がいて、フリーになってから紹介してもらった人もいます。
仕事を頼んできてくれるというのは、ありがたいことであり、すごいことだと感じます。
池村さんじゃなきゃだめ、池村さんでいいかな、池村さんしか知らない、池村さんが心配だから…。
依頼するときの事情や心持ちがどうであれ、その人にとって池村は、少なくとも、どこの馬の骨ともわからないやつではないのです。
慣れてしまうと忘れがちですが、頼んでくれるってすごいことなのです。

そんなふうに思う、10年目の春の日。
今あるおつきあいをこれからも大切にしつつ、馬の骨から始まる出会いもさぐっていけたらと、心を新たにしています。